REEF CHECK JAPAN 2001 結果報告

 
2002.4.
コーラルネットワーク
1.国内調査状況および結果概要 

1)ポイント 沖縄県 久米島 はての浜
調査日 5月21日
ポイント 沖縄県 久米島 はての浜
チームリーダー 川本剛史(ダイブ・エスティバン)
チーム科学者 長田智史(琉球大学博士課程)
鈴木倫太郎(駒澤大学博士課程)
主催 ダイブ・エスティバン/コーラルネットワーク
参加者 15名


【調査結果概要

 2回目の調査でした。
 
造礁サンゴ被覆度は、水深10mでは39%と昨年(42%)同様にサンゴ礁の健康度としては良好な状態でした。水深3mでは11%とやや良好な状態ではあるものの、昨年(21%)の約半分にまで減少していました。シロレイシガイダマシによる食害痕が観察されており、それが被覆度減少の一因と考えられます。しかしながら、シロレイシガイダマシ自身はほとんど確認されませんでした。昨年大発生してサンゴに食害を与えた後、急激に減少していった可能性があります。また、昨年は全く観測されなかった最近死んだサンゴが、水深3mで1%確認されました。目視確認では、場所によってはもっと多く確認されています。

チョウチョウウオ科は水深3mでは4個体しか確認されず、昨年(12個体)の1/3に減少していることから、造礁サンゴ被覆度の減少が原因である可能性があります。
 全体的に、着床したばかりの小さなサンゴ群体が多く観測されており、今後の回復が期待されます。

2)ポイント 和歌山県 串本 双島
調査日 5月26-27日
ポイント 和歌山県 串本 双島
チームリーダー 池田慎也(コーラルネットワーク)
チーム科学者 野村恵一(串本海中公園センター)
主催 ダイブ・エスティバン/コーラルネットワーク
参加者 20名


【調査結果概要

 2回目の調査でした。

 3mの造礁サンゴ被覆度は67%で、昨年よりも約3%低下しましたが、海底面を半分以上も被うサンゴの量は、サンゴ群落の健康度としては依然非常に良好な状態を示していると言えます。本海域で優占するクシハダミドリイシは成長速度が速く、年間10cm以上も伸びるので、台風波浪や様々な自然の制約に阻まれなければ、被覆度がより向上する可能性があります。本海域でもヒメシロレイシガイダマシの食害による被害が昨年から発生しており、今年は10%に食害が確認されました。被覆度の値の低下率はヒメシロレイシガイダマシの食害率よりも低い値となっていますが、これはサンゴの増加率が相殺しているためです。一方、10mでは造礁サンゴ被覆度は昨年と同じ34%とほとんど変化していません。これは、本地点は3mに比べて成長の早いミドリイシ類が極めて少ないことや、わずかながら貝の食害に遭ったサンゴがいたことなどが関連しているものと考えられます。また、グレイザーである多量のナガウニ類の影響も気になる所です。なお10mでは浅所よりソフトコーラルがやや多く見られました。魚類・無脊椎生物の調査対象種は熱帯要素が強く、串本ではまず見られないか、少ないものばかりで、それは調査結果が良く表しています。そして、これらが串本での調査でたくさん観察されるようになると、温暖化の影響が強く示唆されます。対象種の中で唯一突出した高い値を示したのがガンガゼ類(ほとんどがガンガゼ)です。また、昨年と比較すると3mで1.4倍の148個体、10mで2倍の10個体に増えています。ガンガゼの増加傾向は串本中で観察されており、双島前でも同様の傾向があることが確認できました。温暖化の影響が関連しているのでしょうが、ガンガゼが増え出してもサンゴ礁域のように強力な捕食者(大型モンガラ類)が串本にはいないので、自然の抑制が働かないのも一因かもしれません。また、以前、串本地方では本種が釣餌用に獲られていましたが、今はあまり採集されていないようです。この人為的圧力の低下も、あるいは少しは関連しているかもしれません。


3)ポイント 沖縄県 小浜島 小浜北

調査日 6月9日
ポイント 沖縄県 小浜島 小浜北
チームリーダー 野口定松(ダイブサイト・ノグチ)
チーム科学者 吉田稔(株式会社海游)
主催 ダイブサイト・ノグチ/コーラルネットワーク
参加者 14名


調査結果概要 

2回目の調査でした。

 造礁サンゴ被覆度が、水深3mでは48%、水深6mでは54%と、昨年に比べていずれも約10%もあがっており、サンゴ礁の健康度としては非常に良好な状態でした。これは卓状、散房花状のミドリイシ類の被覆度が上がったことに由来しています。3m、6mラインともにサンゴ相は類似しており、直径20?30センチ大の卓状、散房花状のミドリイシ類を中心として、直径5センチ大の新規加入のミドリイシ類が多く見られました。直径5センチ大になるのは、プラヌラが定着してポリプを形成して2?3年程度かかります。しかしその後は1ヶ月に1?2センチ成長するので、来年の調査でははかなり造礁サンゴ被覆度が上がることが期待されます。

 魚類調査における結果は、2000年2001年ともに同じような出現傾向を示しました。チョウチョウウオ類は、ヤリカタギ、ミスジチョウチョウウオなどサンゴ食のものが比較的多く、サンゴ類が豊富なことがこれらの魚類の生存にかかっています。八重山周辺海域では、合法的に漁業者が観賞用としてチョウチョウウオなどを採捕しています。年々その漁獲圧によりそれら観賞用の魚類が減少しています。今後、極端にチョウチョウウオの出現状況が減少した場合、観賞用魚類のための資源保護対策として禁漁区、禁漁期間などの設定を主張するための良いデータになると考えられます。またハタ類やメガネモチノウオなどの高級魚も、かなり漁獲圧が強く0匹という結果が続いています。無脊椎調査対象種の出現状況はかなり低いです。


4)ポイント 沖縄県 与那国島 空港北

調査日 7月1日
ポイント 沖縄県 与那国島 空港北
チームリーダー 田島直人(フロムウェスト)
チーム科学者 吉田稔(株式会社海游)
主催 ダイビングサービスフロムウェスト/コーラルネットワーク
参加者 13名


調査結果概要

 初めての調査でした。

 造礁サンゴ被覆度は水深6mで36%、水深10mで38%と健康度としては良好な状態でした。水深10mで海綿が6%観察されたのが、他の地域に対する特徴になっています。
 チョウチョウウオ科は水深10mで16個体であるのに、水深6mでは6個体しか観察されず、倍以上も個体数が異なっていました。造礁サンゴ被覆度がほとんど変わらないので、この差が何に由来しているのか、継続調査より探る必要があります。他は、イサキ科が水深3mで1個体、ウツボ科が水深10mで2個体観察されているのみです。


無脊椎生物ではシャコガイ属が水深6mで12個体と比較的多く観察されています。
5)ポイント 静岡県 田子 白崎

調査日 9月22-23日
ポイント 静岡県 西伊豆町 田子湾 白崎
チームリーダー 宮本育昌(コーラルネットワーク)
チーム科学者 鈴木倫太郎(駒沢大学博士課程)
主催 コーラルネットワーク
協力 シーランドダイビングサービス
参加者 24名


【調査結果概要

 2回目の調査でした。初日に予備調査として調査地の概況確認と、調査訓練を実施しました。
 最近死んだサンゴが南群落で約10%と多いことが最も特徴的です。これらは全て白化による死滅です。造礁サンゴの被覆度はこれに対応していませんが、設置したラインの位置ずれによる誤差と考えられます。また、多肉質海藻が数%ありますが、これは昨年と調査時期が異なる(昨年は11月下旬)ために、毎年冬に繁茂する海藻が無くなっていないためと考えられます。その他の1カウントはイソギンチャクでした。他の区分での被覆度の変化は、設置したラインの位置ずれによる誤差が主因と考えられます。

 伊豆の他の地域には出現しないサンゴのポリプを食べるタイプのチョウチョウウオ科の幼魚が確認されています。これは死滅回遊魚と呼ばれ、冬には死滅してしまいます。これらはミドリイシ群落が無いと生きていけないことから、サンゴ群落の状態に対する重要な指標となります。昨年より個体数が減っていますが、調査時期の違いによる差もあると考えられますので、これがすぐに白崎のサンゴ群落の悪化を示すものではありません。また、これらの種が産卵される南方でのサンゴ群落状況にも依存している可能性もあります。
 オトヒメエビの減少はラインずれ等による誤差が主因では無いかと考えられます。食用ナマコは昨年と調査対象種が変わったため計数されなくなりました。ガンガゼ属が減少していますが、原因は不明です。
 釣り糸や錘、缶などのゴミが多数見られました。調査範囲外には、車のバッテリー、家電製品等の不法投棄と考えられるような物もありました。これらによるサンゴ群落への悪影響が懸念されます。



6)ポイント 沖縄県 沖縄島 辺野古崎 平島

調査日 11月23日
ポイント 沖縄県 西表島 鹿川
チームリーダー 野口定松(ダイブサイト・ノグチ)
チーム科学者 橋本和正(水産総合研究センター)
主催 ダイブサイト・ノグチ/コーラルネットワーク
参加者 16名


【調査結果概要】

3回目の調査でした。

造礁サンゴ被覆度は水深6mで51%、水深10mで42%と、サンゴ礁の健康度としては非常に良好?良好です。昨年と比較すると水深6mでは9%、水深10mでも3%被覆度が低下しています。しかしながら、最近死んだサンゴはそれぞれ1%、2%しか観察されておらず、差があります。今後の推移より、平均的にどのように造礁サンゴ被覆度が推移しているかを確認する必要があります。
 
 
チョウチョウウオ科はいずれの水深でも十数匹と昨年と同等です。イサキ科が水深3mで1個体確認されています。ブダイ科が水深10mで4個体観察されたのみで、昨年、一昨年より少なくなっており、漁獲圧の影響が懸念されます。今年から調査対象となったウツボ科は水深6mで6個体と比較的多く観察されています。
無脊椎生物はシャコガイ属が水深6mで6個体、水深10mで2個体観察されたのみです。これは昨年と同様の傾向です。一昨年と比較すると、昨年、今年とパイプウニ、シャコガイ属ともに個体数が減っており、漁獲圧の影響が懸念されます。